夜風が、髪をそっと揺らしていた。
帰り道。
彼と並んで歩いた時間を思い出すと、
胸の奥が少しあたたかくなる。
好き。
一緒にいると安心するし、
もっと会いたいと思う。
LINEが来れば嬉しいし、
次のデートの日を楽しみにしている。
なのに。
彼から少し踏み込まれた瞬間、
身体がこわばってしまった。
「恋人なんだから、普通だよ」
そう言われるたびに、
「私がおかしいのかな」と思ってしまう。
「好き」と「したい」は、同じじゃなかった。
私は彼のことが好き。
それは本当。
でも、性的なことになると怖くなる。
触れられることに抵抗があったり、
「この先を求められたらどうしよう」
と不安になったりする。
本当は嫌なのに、
「恋人なんだから応えなきゃ」
「断ったら嫌われるかもしれない」
そんなことばかり考えてしまう。
そして、帰り道。
ひとりになった瞬間、
「どうして私は普通にできないんだろう」と、
自分を責めてしまう。
夜風が頬を撫でる。
街の明かりがぼんやり滲んで見える。
誰にも相談できない気持ちだけが、
胸の奥に残っていた。
恋愛したい気持ちと、性的な気持ちは別もの。
恋人がほしい。誰かに大切にされたい。
手をつないで歩きたい。一緒にご飯を食べたい。
くだらないことで笑いたい。
そんな「恋愛したい」という気持ちがあっても、
性的なことへの気持ちまで同じとは限りません。
性欲の強さも、人によって違います。
「恋人なら当然」
「好きならしたいと思うもの」
そう決めつけられると苦しくなる人もいます。
それは、
あなたがおかしいからではありません。
「応えなきゃ」と思わなくていい。
好きな人だからこそ、
嫌われたくない。傷つけたくない。
期待に応えたい。
そう思ってしまうことがあります。
でも、
好きだからといって、
すべてに応える義務があるわけではありません。
「今日は嫌だ」「まだ怖い」
「そこまではしたくない」
そう感じたなら、
その気持ちは大切にしていい。
相手の気持ちと同じになるまで、
無理に自分の気持ちを変える必要もありません。
本当に大切なのは、
「できるか」ではなく「安心できるか」。
恋愛には、
人それぞれのペースがあります。
早くてもいい。ゆっくりでもいい。
性的なことに積極的でもいい。
慎重でもいい。
今はしたくない、でもいい。
大切なのは、
「恋人ならこれくらいしなきゃ」
ではなく、
「私は、この人といて安心できている」
ということなのかもしれません。
あなたの「嫌だ」「怖い」「まだ分からない」は、
わがままではありません。
あなた自身の大切な気持ちです。
もし今、
「好きなのに、性的なことが怖い」
「こんなこと、誰にも言えない」
と思っているなら。
どうか、自分を責めないでください。
好きな人を好きなまま、
自分の心と身体を大切にすること。
その二つは、両立していいんです。
夜風に髪を揺らされながら、
ひとりで悩んだ帰り道。
あのときの私に、
今ならこう言ってあげたい。
「あなたは、おかしくないよ。」
自分の気持ちを大切にしながら、
自分のペースで恋をしていい。
それでいいんだと思います。
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